Trip the Darkness〜闇の空 第壱話:であい。
新しい風、
澄み渡る青空、そして
新しい街。
今日から俺の新しい生活が始まる。
Trip the Darkness〜闇の空
第壱話:であい。
俺の名前は、春日野哲之。
今日から、白鳥学園の普通科に通うことになっている。
ちなみにクラスは、2−C。
今、期待と不安に心が躍っている。
「哲之〜、そろそろ行かなくていいの?遅刻するわよ。」
「は〜〜い。」
今のは、母さん。
ここ、榊町には母さんと俺と妹の春奈でやってきた。
父さんは、過労で倒れて…そのまま…。
まだ小さいころだったから記憶にはないんだけど…。
でもやっぱり、父親の話題をされると寂しい気がする。
その代わり、母さんが俺に充分すぎる位の愛情をもらったから、それほど寂しい思いはしてない。
「じゃあ、行ってきま〜〜す。」
「はい、いってらっしゃい。はい、お弁当。」
「ああ…、じゃあ行ってきます。」
俺が、行ってきますの挨拶をして家から出ようとした時、
「あ〜〜やば〜〜〜い、遅刻じゃん。…行ってきま〜〜〜す。」
春奈がパンを加えて走ってきた。
「おいおい、あんまり急ぐと転ぶぞ。」
「大丈夫だよ…お兄ちゃんほどドジじゃないし…」
そう言って、春奈は駆け出して行った。
春奈も、白鳥学園に編入した。
俺は、高等部で春奈は中等部。
高等部の方が中等部より、登校時間が15分遅い。
だから、この時間だと余裕なのだ。
もう、5、6回ほど学校に行ったし、道に迷うこともないだろう。
(どんな感じのクラスなんだろう?…共学校だって聞いたけど…)
俺が前に通っていた学校は、男子校だった。
中等部の時からずっと変わらずに。
初等部の時は、男女共学だったけど。
そのときとはきっと、全然違うんだろうなぁ。
それに以前の学校は、進学率が99%を超える全国的に有名な私立の進学校だった。
そこに、初等部から通わされていた。
いわゆる、今流行のエリート教育。
周りは皆、優秀だった。
その中に、俺はついていくのがやっとだった。
そのせいで、10年間ずっとやっていた弓道の部活をやめた。
でも、これから通う学校は、レベルは中の上で、進学率は約7割。
校風は自由で、のびのびと。
編入試験は、一学期の期末テストだった。
316人中17番。
そこそこの出来だった。
この順位なら、また弓道が出来るだろうと思う。
一応、学校の部に載ってたから…。
少し、楽しみでもある。
(これから、ここが俺の通う道かぁ〜。)
俺は、そんなことを考えて歩いていた。
多少、ぼぉーっとしていた。
「あ、危ないーーー、どいてくださーーーい!!」
と、突然、甲高い大きな声が後方から聞こえた。
何事かと思い振り返ると、自転車が超スピードで降りてきている。
ちょうど、そこは下り坂になっていた。
自転車に乗っている女の子は、ブレーキを強く握っていたが、一向に止まる気配はない。
どうやら、ブレーキが利かないようだった。
このスピードでいくと、ぶつかる。
そう思った俺は、自転車を紙一重でかわした。
スルリ
俺のすぐ横で、自転車の風を切る音が聞こえた。
ギュ、ギュ
そして、
バーーン
予想通り、ガードレールに激突した。
自転車は倒れ、女の子は50センチほど飛ばされた。
思ったより、女の子が吹っ飛んだので、心配になって駆け寄った。
「大丈夫…ですか?」
見た目は、俺より幼いように見えたけど、一応、丁寧語を使った。
もしかしたら、年上かもしれないと思ったからである。
前の学校に、声変わりのしていない高等部3年生の男子がいたのである。
まあ、倒れてたのは女の子だけど…。
「あー、いたっ。………、だ、大丈夫です。」
さっき聞いた、甲高い声とは違って、少し弱弱しい声だった。
女の子は、そのまま立ち上がった…が、すぐに倒れてしまった。
「本当に、大丈夫ですか?」
「…ん〜〜、思ったより、大丈夫じゃないみたいです。…足がずきずきしますし…」
そう言って、女の子が指をさしたところは、内出血を起こして紅く腫れていた。
見ただけでも、痛々しかった。
「どうすれば…いいんですかね。」
「…ん〜〜、とりあえず、上月先生に2−Cの西野佳織が、遅れます…って伝えてくれませんか?」
2−C?
それって、俺のクラスだ…。
「2−C?」
「はい…そうですけど…」
「じゃあ、同じクラスなんだ…。」
「え?…えぇ??…名前は?」
「あ〜〜、春日野哲之。今日から、ここに編入することになった。…転校生。」
「え?あ〜へぇ〜〜、そうだったんだぁ〜〜、よろしくね……え〜〜っとなんて呼べばいいかな??」
「あ、何でもいいよ。春日野でも哲之でも…。」
「じゃあ、哲君って呼ぶね。」
佳織は、笑顔で言った。
「じゃあ、俺は何て呼べばいい?」
「かおりん。」
佳織は、即答で答えた。
予想外中の予想外だったので聞き直した。
「もう一度、聞いてもいい?なんて呼べばいい?」
「かおりん…って冗談だよ。西野でも佳織でも…好きなほうで呼んでよ。」
「じゃあ、俺も名前で呼ばれてるから、佳織ちゃんでいい?」
「うん。いいよ」
ということで、お互いのことを少し知ったところで、遅刻ギリギリの時間になっていた。
「あっ、時間!」
「あっ、本当だ。…じゃあ、担任の…上月先生…に伝えておくね。」
「うん。私は、一度家に帰ってから行くから…じゃあね。」
「うん、じゃあね。」
(とりあえず、急がなきゃ)
俺は、少し走った。
部活をやめてから、運動をほとんどしなかったせいか、体が重い。
(そういえば、女の子と話したのって、久しぶりだな)
意外と普通に話せるもんだな。
中等部のときとかは、春奈くらいしか話してなかったし…。
まぁ、その方がいいんだけどね。
「はぁ、疲れた。」
走ったせいか、5分前についた。
(とりあえず、職員室…だよな)
走って、乱れた呼吸を整えて職員室に入る。
え〜〜と、上月先生だったな。
少し優しそうな先生がいたので、聞いてみた。
「あの、上月先生は?」
「あ〜〜、あっちだよ。」
「ありがとうございます。」
編入試験のときや説明会にも会ったので、これが3回目になる。
明るく、フレッシュな感じの先生だ。
「上月先生、あの、おはようございます。」
「あ、おはよう…春日野君。…え〜〜っと、もうホームルームが始まるから、行くわよ。」
「あ、はい。」
とりあえず俺と上月先生は、職員室を出た。
「2−Cは、明るくて楽しいクラスよ。…皆、いい子だから、すぐに友達も出来ると思うわ。」
「あ、そうですか。」
「ちょっと、待っててね。」
気付くと、2−Cの教室だった。
「これから、朝のホームルームを始めるわけですが、ここで転校生を紹介します。春日野君、入って。」
俺は、少し緊張の面持ちで教室に入った。
そして、
「春日野…哲之です。よろしくお願いします。」
クラス的な雰囲気は、明るくて良さそうだ。
(俺の席ってどこだろう?)
「春日野君の席は、あっちよ。佐藤さん。」
「春日野君、こっち。」
まるで、俺の心の中を見透かしたかのような言動にびっくり。
え〜〜と、後ろはちゃらちゃらしてる。
前は、普通。
横は、空席…。
休み…??
「あっ。」
思わず、声をあげた。
佳織ちゃんのこと言うの忘れてたよ…。
「どうかしましたか?」
「佳織ちゃん…いや…、え〜〜と…あ〜西野さんが怪我で遅れるそうです。」
「佳織ちゃんだと??お前、あいつの…知り合いか?」
後ろのちゃらちゃらしてる奴が聞いてきた。
「ん〜〜??今日初めて会ったんだけど、自転車から落ちて怪我したから…伝えてって」
「じゃあ、まだあいつとは…、」
俺が、佳織ちゃん発言をしてから、クラスは静かになった…。
今までとは正反対だ。
まるで、触れてはいけないような話題のような…。
「春日野君…。西野さんはね…、炎の能力者なの。7年前の事件…。覚えてるわよね。」
(あの…事件?)
「魔術の?」
「そうよ…あれは、西野さんが起こしたのよ。その事件で、この中にも家族を失った人がいるの…。」
「そうだったんですか…。」
俺は、その事件を聞いた事があった。
あとがき
Trip the Darkness〜闇の空
ようやく壱話できましたよ。
こういう小説書きたかったんです。
んまぁ〜〜、最終話については何も考えてません。
ってか、最終話にたどり着くんでしょうか。
乞ご期待。
【小説の部屋に戻りたいわけで…】